第3回 入学の動機 | 文系大学院生の傾向と対策

第3回 入学の動機

たしかに、大学院に入学するということは、

興味のある分野を究めるという目的あってのことでしょう。

大学に残れば思う存分研究に時間を使うことができます。


しかし、大学院生であるということは

もう一つ別のメリットがあったのではないでしょうか。

つまり、働かずしてある種の社会的地位が

確保できるということがありはしないでしょうか。


朝から晩まで仕事に拘束されるよりは、

好きなときに起きて好きなときに研究をしたほうが

ずっと楽です。

日本でNEET(Not in Employment, Education or Training)

と呼ばれている人たちは68万人ほどいるそうですが、

文系大学院生は少なくとも教育機関に通っているので、

NEETではないわけです。


変わった学問をしていますねと驚かれることはあっても、

無業者として白い眼で見られることはありません。

だから自分でも、なんとなく

今のままでいいんじゃないかと思ってしまいます。


そんなふうに自分を許して、

すべてがぬるま湯の中で過ぎていくと、

社会に出て必要なスキルを学ぶべきときに

自分は時間を無為に過ごしているということに、

なかなか気づきません。


人文系の学問はビジネスと全く関係がないことが多く、

社会科学系の大学院生のように専門性を活かした

シンクタンクへの就職や公務員への転進も困難です。


したがって、大学教員という道が絶たれたときに

他に何かをしようと思っても何もできないことに気づき、

あわてふためくということが起こります。


たとえ学問への純粋な愛があったとしても、

こうした事態は文系大学院に入学した

本人の責任以外のなにものでもないでしょう。

社会に出る代わりに大学に依存の対象を求めた

結果であるともいえるでしょう。